ポスターの原画製作者である大町氏からコメントをいただきました。
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コスキン・エン・ハポン2023の開催、誠におめでとうございます。
この大きなフェスティバルに関わる皆様の熱量の高さと友情のあつさには特別なものがあると思います。今回も心に響くドラマが様々に展開されることでしょう。とても楽しみです。
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今回のコスキンエンハポンポスター原画はボリビアのシクリアーダを描きました。
フォルクローレのトラディシォナルな演奏スタイル・アウトクトナのひとつであるシクリアーダは、基本的には複数のサンポーニャ（シーク）と太鼓のみのシンプルな合奏形態をとる事が多いそうです。ボリビアやペルーなどの複数の地域で、その土地特有の伝承と進化を続けて来たシクリアーダからは圧倒的な迫力と共に、大らかで原初的、雄大な素朴さも感じます。
このポスターの原画は２つの参考資料を基に描きました。１つは作者が37年前にボリビアを旅した時、ラパスの書店で購入した「CULTURA CALLAWAYA」（クルトゥラ カリャワヤ/カリャワヤの文化）の中に掲載されていた古びた写真。もう１つは伝説的かつメンバーを変えながらも活動中のグループ、RUPHAY（ルパイ）の演奏風景。※1
幾つかの画像から構成したイメージのため、使用されている楽器や奏者の配置、演奏しているポーズのタイミングには関連がありません。絵画の構図を考える上で、それぞれの奏者の配置とポーズを活用し、三角形と逆三角形を組み合わせて「安定と変化」「円環を描くような流れ」を作りました。
画面上部の流動的な形と色彩は、作者が40年近く本業の抽象絵画制作に活用している技法「Fluid marbling /
流動的なマーブリング」によるものです。シクリアーダの重層的な音のうねりと、天体としての地球と共鳴するかのような音の拡がりのスケール感を表現するために組み合わせました。
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この演奏形態は作者本人も数度体験しています。20年ほど前、首都圏の知人たち約20名と集まり、幾つかの機会を得て演奏しました。その時の観客の方から「聴いている側も迫力を感じて驚いたけれど、演奏している側はもっと面白がっているように見えた。何だか羨ましい」という感想を頂きました。確かにその通りだと思いました。シクリアーダは同じメロディとリズムを繰り返すのが基本です。演奏していると、集中と弛緩を同時に体験しているかのような感覚を覚えるようです。アスリートがよく言葉にする「ゾーン」に入った感覚に近いのかもしれません。
そして、絵を描いている時にも似た感覚を覚える事があります。絵画と音楽が同期するような絵を描きたいものだと思う事があります。人間の諸活動の中でも音楽と美術は結構似た者同士なのでしょう。
フォルクローレの祭典・コスキンエンハポンのポスターとしてシクリアーダを描く機会が訪れた事に感謝しながら完成させることができました。
このポスターが出演者の皆様と観客の皆様、スタッフの皆様、支援者の皆様、それぞれの思い出深い記憶に寄り添い、ささやかに役立つことを願っております。
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※注釈１
イメージの引用に関して、川俣町中央公民館の大内剛さんにご尽力頂き、RUPHAYのRamiro Calderonさんとコンタクトを取って頂きました。
更に「引用の趣旨を理解して頂けるように」とのご好意から、木下尊惇さんが旧知の仲であるRamiroさんと電話で対話してくださいました。コスキンエンハポンが非営利のイベントである事や、これまでのコスキンエンハポンに於ける、ポスターが担って来た役割などについてご説明頂けたとの事。厚く厚く感謝申し上げます。
その結果、Ramiroさんから現在のRUPHAYメンバーの皆様全員に確認をとって頂き、こころよく引用のご承諾を頂くことができました。それどころか「そんな大きなフォルクローレのフェスティバルのポスターに我々のイメージを活用するくらいなら、なぜ我々を呼ばないのか？」とまで。
もちろんそれは愉快な会話の流れで出て来た言葉でしょう。実際には幾つものハードルがあると思われますから、楽しい話題として喜ぶのみでも良いと思います。
私にとってRUPHAYという音楽集団は「特別な音楽を創り出す人々」とリスペクトして来たグループ。だからこそ今回の経緯のひとつひとつが嬉しい驚きの連続でした。
自分自身がアマチュア演奏者として出演を続けて来たフェスティバルでポスター原画制作を前任の神保亮氏から引き継ぐ事になったのも不思議なご縁です。そして、それがきっかけで、リスペクトするグループと（間接的にではあるものの）コンタクトが取れた事に、とても感激しました。
人生は思うようにならない事も多いですが、時に予想できない展開で面白くオツな事も起こるものですね。様々なご縁に感謝するばかりです。
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