原画製作者の大町氏からコメントをいただきました。
4年ぶりとなるリアルコスキンの開催、おめでとうございます(ポスター制作は3年ぶりです)。
原画を描く際、出演者の皆様、観客の皆様、遠方から関心と応援の気持ちを送られている皆様、事務局・実行委員会とコスキン・インフォメーションセンターの皆様、そして川俣町の皆様のことを考えました。見て下さる方のことを考えなければ描くモチベーションが上がらないと言った方が正しいかもしれません。
今回は伝説的なケーナ・サンポーニャ奏者ウニャラモス氏の印象から着想を得ました。
随分クラシックなイメージだと感じる方も多いことでしょう。また、氏の曲の雰囲気と異なるイメージを合わせている事に違和感を覚える方も。
(バックグラウンドのレコードジャケット群にアルゼンチンとボリビアのイメージが混在しているとか、なぜウニャラモス氏がケーナを演奏している姿を描かなかったのか、など)
私も、そう思います。
画面構成の段階で、そのような考えが何度か浮かびました。このチグハグさはフォルクローレやコスキンエンハポンというイベントを愛する人々に失礼ではないのか?など(もっとも、「そんなこと考える必要ないよ」と言われそうでもありますが)。
結果、「ここにこの色彩と温度が必要」「この部分には高さの拡がりが欲しい」など、画面上の色彩や動きのバランスを優先させ、意味の一貫性は求めないことにしました。それからは自由度が高まり、描いていて面白く取り組めました。
ですので、ここに描かれているのは、一人の音楽好きな絵描きにフォルクローレの面白さや魅力を伝えてくれた曲や演奏家やレコードジャケットなどのイメージのコラージュということになります。
もし共感して頂ける要素が少しでもあれば嬉しい限りです。
また、ポスターの人物などが馴染みのないイメージと感じられた方は、ぜひコスキンエンハポンの会場に足をお運び下さい。
そして、その場にいる方たち(どなたでも!)に、ポスターに描かれた人やレコードについて質問してみて下さい。
尋ねられた方は(結構な確率で)きっとその人にしか語れない記憶や情熱をもって興味深い話をしてくれると思います。
このポスターが愉快なコミュニケーションのためのツールになり得るならば、それこそ制作者冥利に尽きるというものです。
デザイン事務所サリバンの西谷友希氏には今回も確実・誠実なご対応を頂き、美しいデザインのポスターに仕上げて頂きました。
原画はいささか重めの絵でしたが、スッキリまとまって見えるのは西谷さんのデザイン力によるものです。感謝申し上げます。
コスキンエンハポンのポスター初代制作者の神保亮氏に対するリスペクトが、私のポスター原画制作の根本にあります。あのように力強く人間味あふれる絵は描けません。
私にとって神保さんの絵は競う対象ではなく、灯台の光のように進むべき方向を指し示して下さっている存在なのだと感じます。尊敬できる先達がいるのは幸せなことです。
このイベントを通して人々と社会に楽しみを創出し、ねばり強く継続して来られたコスキンエンハポンの初代事務局長・長沼康光氏と現事務局長・齋藤寛幸氏、そしてその活動を支えて来られた有志の皆様に敬意と深い感謝を捧げ、コスキンエンハポンの成功と繁栄を心より祈念いたします。
2022年8月31日
ポスター原画制作者・大町 亨